コズミックブレイク2
シャイニングスターメモリーズ ≪ 24 ≫

原作:サイバーステップ
小説:青葉あおい

列柱の影からフィオナが飛び去っていく姿を認めて、ルナが大剣を構える。

「逃がさないわ! アクセルバウンド!」

地を蹴って一直線に飛んでいくルナに続いて、ゼロとクリムも各々の武器を手にフィオナへと飛びかかる。

「アサルトドライブ!」

「ティアリングダイブ!」

上空と左右の3方向から迫り来る敵を前にして、フィオナは一瞬だけブースターを吹かして後方へ大きくジャンプする。そうして間合いを広げている間に、レールガンの銃口に青白い光輪を発生させて3人へマーキングした。

「シングルロックオン!」

放たれた誘導弾は、それぞれのマーキングポイントに向かって弧を描きながら飛んでいく。ルナは大剣を盾にして防ぎ、ゼロは素早い機動でポイントを外す。クリムはティアリングダイブの勢いを殺しきれずに砂漠へ突っ込んでしまったが、砂が盾代わりとなったことで弾の直撃を免れた。
ルナがクリムを引っ張り上げている隙に、フィオナはどんどん距離を広げていく。

「バスターを相手にする以上、近づかなければこちらが不利だ! 離されるな!」

ロングソードを掲げながらゼロが叫ぶ。ようやく砂から起き上がったクリムも、ルナと一緒に気合いを入れた。

「行くわよクリム!」

「はい!」

逃げるフィオナは、時折牽制の狙撃を交えながらも例のピラミッドに辿り着く。振り返り、ゼロたちが追撃してきているのを確認し、フィオナはそのまま内部へと進んでいった。
一方ゼロは、フィオナがピラミッドに入ったのを見て後方の2人に止まるよう手で指示を出した。

「師匠、どうかしましたか?」

足を止めたルナが尋ねれば、ゼロは前方に目を向けたまま答える。

「見通しの良いステージで地の利があるはずなのに、わざわざ入り組んでいる建物の中に入るなど明らかに不自然だ。まるで、我々を誘っているかのような行動だぞ?」

「もしかして、待ち伏せでしょうか? さっきから他のメンバーが見当たりませんし……」

「その可能性は高いだろうな」

相談のために足を止めていると、青白い光輪が3人に重なった。それがフィオナのマーキングであると気付いた傍から鋭いレーザーが打ち込まれ、3人は砂地に飛び込むようにしてそれを避けた。
砂の上を転がったルナは、すぐに起き上がってゼロに進言する。

「このままジッとしていても、無駄に時間が過ぎるだけです! どうせ人数差からして不利なのですから、一か八か突入しましょう!」

「虎穴に入らずんば虎児を得ずか……よし! 私とルナで突入し、クリムはここで――」

待つように、と言おうとしたところで、クリムが真剣な表情で首を左右に振った。

「いいえ、私も行きます!」

「室内ではエアリアルの機動性が活かせないのだぞ? 君は外で待機していた方がいい」

ゼロが経験の浅いクリムを気遣うも、クリムはそれを頑として受け入れなかった。

「お2人が危険を承知で行こうとしているのに、私だけ安全な場所に残っているなんて嫌です! ダメだと言われてもついていきます!」

それを聞いたゼロは、仕方がないと言いたげに肩を竦めてみせた。

「わかった。だが、無理はするんじゃないぞ?」

「はい!」

ゼロを先頭に、3人はピラミッドの内部へと飛び込んだ。


フィオナは突入しようとする3人を見て、すぐに身をひるがえした。ここまでは作戦通り。あとは通路を進んで中心部へ向かうだけだ。
通路には複数の足音が響いている。音の大きさから推測するに、まだ十分に距離がありそうだ。誘い込むのはいいが、追いつかれては元も子もないため、フィオナは走りやすさを重視するべくレールガンをスリープモードにして走り続けた。その甲斐もあって、フィオナは十分な距離を保ったまま中心部の空洞へ辿り着くことができた。
空洞の中央に陣取ったフィオナは、すぐにレールガンを起動させて銃口を通路へと向ける。トリガーに指をかけて、いつでも狙撃できる体勢を整えた。
視線だけを動かして周囲の状況を確認するが、パッと見ただけではナイトメアードたちの姿を見つけられなかった。後方から挟み込むのならば、通路の付近で身を潜めているのだろうかと思い目を凝らしてみるも、薄暗いせいもあるのかやはり見当たらない。
聞こえてくる足音が次第に大きくなる。フィオナはチームメイトの姿を探すのを諦めて、通路の入口に意識を集中させた。

「チャージ完了。いつでも撃てる」

姿が見えたら、まずは一撃をお見舞いする。そうすることで敵の意識を己に集中させて、背後からの奇襲をやりやすくするのだ。
しばらくして、通路の向こうで小さな光が煌めいた。水色の点が2つ。おそらくはゼロのロボアイだろう。

「アサルトドライブ!」

声が響き、ゼロがきりもみ回転しながら通路から飛び出してくる。フィオナはすかさずレールガンから光弾を放つが、攻撃はプロテクト粒子に吸収されただけで撃墜には至らなかった。
だが、それもまた計算通りだ。敵はフィオナを攻撃することに意識を集中させている。
仕掛けるなら、今だ。

「ジャッジメント・レイ!」

レールガンを真上に向けて構え、フィオナは味方に合図を送る。弾速重視のレーザーが天井を突き抜けて、空の彼方へと消えていく。
その途端に、地響きがピラミッドを襲った。


通路に突入した3人は、響いてくるフィオナの足音を頼りに先を目指した。入り組んだ通路を右に左に進み続けることしばらくして、通路の奥にレールガンを構えるフィオナの姿を認めた。

「師匠、フィオナの足が止まっています! あそこで迎え撃つつもりでしょうか!?」

「うむ! 奇襲や陽動だとしても、こう狭くては身動きも取れん! 私が飛び出して注意を引きつけている間に、2人は左右に展開して挟み込むんだ!」

「了解!」

「わかりました!」

ゼロのロボアイが輝き、ブースターがひときわ強い火を放つ。

「アサルトドライブ!」

通路から飛び出すと同時にフィオナの砲撃が襲ってくるが、ゼロは粒子コーティングがされているのをいいことにそのまま自らを盾とする。ゼロが攻撃を受けている間に、ルナとクリムも狭い通路から抜け出して左右に展開した。
三方からの攻撃で、今度こそフィオナを仕留めようと飛びかかる。するとフィオナは、なぜかレールガンを直上に向けてトリガーを引いた。

「ジャッジメイト・レイ!」

細いが、その分鋭さを増したレーザーが天井を貫いた次の瞬間、とてつもない地響きがピラミッドを襲った。突然の事態を前にして、3人はフィオナに飛びかかろうかという格好のまま固まってしまう。

「何!? 何が起こったの!?」

ルナが叫んだそのとき、壁や天井に幾筋もの亀裂が入った。

「くっ! グリーフインパルス!」

真っ先に反応したのはフィオナだ。彼女はレールガンを壁に向けて構えると、高威力の電磁砲で壁の上部に大穴を開けた。

「エンジェルフロート!」

浮かび上がったフィオナはそのまま大穴から脱出するが、彼女の姿が壁の向こうへ消えると同時に、天井から次々と瓦礫が降ってきた。

「きゃあ!」

「クリムっ、危ない!」

ルナが咄嗟にクリムを押し倒せば、クリムのブースターに瓦礫がぶつかって粒子の光を巻き散らした。ブースターからバチバチと火花が上がっているが、体に当たらなかった分まだ不幸中の幸いと言えるだろう。
ルナはすぐさま起き上がってクリムの手を掴む。

「立って! 急いで逃げないと、また瓦礫が降ってくるわよ!」

「はっ、はい!」

クリムがルナに手助けしてもらいながらなんとか立ち上がったそのとき、先ほどよりも大きな瓦礫が2人めがけて降ってきた。

「いかん! クリム! ルナ!」

ゼロはアサルトドライブで2人との距離を詰めると、タックルをする勢いで2人の体を両腕に抱えた。

「ここから離脱する! しっかり捕まっていろ!」

飛行するゼロは瓦礫の雨を縫うようにしながらフィオナが開けた穴を目指すが、崩落はどんどん進行していき、落ちてくる瓦礫も巨大になっていく。

「きゃああ!」

恐怖に染まりきった顔でクリムが悲鳴を上げる。

「このままじゃ、3人とも下敷きだわ!」

青ざめたルナが叫ぶ。
ゼロは必死にブースターを吹かしていたが、ついに飛行限界時間を迎えて速度と高度が落ち始めた。まだ穴までは距離があるのに、このままでは届くよりも先に全員が下敷きになってしまうだろう。

「くっ――――そうはさせるか!」

ゼロが叫んだそのとき、彼の意志に呼応するようにボディが金色の輝きを放った。太陽と見紛うほどの眩い光にクリムとルナが目をつむる中、ゼロはそれまできつく抱えていた2人の体を空中へ放り投げた。

「クリム、ルナ! どうか耐えてくれ!」

2人には、師が発した言葉の意味を問い返す暇すらなかった。

「うおおおおおおおおおお――――――――!」

光輝くゼロは、すさまじい速度で地上を走行しながら2人に斬りかかってくる。

「師匠!?」

「ゼロさん、何をするんですか!?」

血迷ったとすら思えるほど、ゼロの迫力には鬼気迫るものがあった。ルナが咄嗟にクリムの前に出て大剣を構えれば、ゼロのロングソードとぶつかりあって激しい金属音が鳴り響く。

「アサルトドライブ、オーバーヒート!」

ブースターの射出口から炎が吹き出す。その勢いは蒼い月の民で腕力に自信があるルナの力をもってしても止められず、2人の体はゼロとともに激しく回転しながら空中へと舞い上がった。
強い推進力に体を軋ませながら、ゼロはロングソードを握る手に力を込めた。

「師匠として、この身に代えても君たちを守り抜く!」

限界を迎えたブースターが爆発し、その衝撃で体がさらに加速した瞬間、ゼロは力任せに剣を振り抜いて2人を弾き飛ばした。加速の勢いにゼロの剣撃が上乗せされた2人は、フィオナが開けた穴から遺跡の外へ投げ出される。
2人の体は、砂の上を転がった末にようやく止まった。細かい粒子が体から舞い上がる中、2人はすぐさま体を起こしてピラミッドを振り返る。

「ゼロさん!」

クリムが叫ぶ。穴の向こう側にいるゼロは、剣を振り抜いた格好のまま動きを止めていた。

「師匠! 早く脱出を!」

ルナが手を伸ばすが、ゼロは光を失いかけているロボアイに優しげな色を浮かべると、重力に身を委ねながらゆっくりと落下していく。

「……残念だが、エネルギー切れだ」

ロボアイの光が消える。力を失ったゼロの体が、落ちてくる瓦礫の向こうに消えていく。
それまで無事だった壁にも次々と亀裂が入り、ピラミッドはゼロを飲み込んだまま天井から崩壊した。

ルナ「師匠――――!」

クリム「ゼロさぁん!」

悲痛な叫びはけたたましい音に掻き消され、ゼロに届くことはなかった。

~ つづく ~