コズミックブレイク2
シャイニングスターメモリーズ ≪ 16 ≫

原作:サイバーステップ
小説:青葉あおい

刀身を払っていると、ようやく追いついたクリムが瞳をキラキラと輝かせる。

「ルナちゃんさすがです! やっぱりルナちゃんはすごいですね!」

「当然よ! これが私の実力……――てっ、クリム!」

「はっ、はい!? 何ですか!?」

ルナがすごい剣幕で振り向けば、クリムは咄嗟に両手をクロスさせてガードの姿勢を取った。

「何を警戒しているのよ? そんなことよりも、さっきのは何!? あんな角度で急降下するなんて、一体どんな技を使ったのよ!?」

「あああれは、ゼロさんががが教えてくれたんですすすすぅ」

興奮したルナに体を揺さぶられ、クリムは頭をガクガクさせながらもどうにか言葉を紡いでいた。それを聞いたルナはパッと両手を離すと、今度は呆れたようにため息を吐き出した。

「まったく、そんな技を持っているならさっさと出しなさいよ! 今までのバトルは何だったの!?」

「ご、ごめんなさーい! 使う機会が全然なかったんですぅー!」

そう言われてみれば、たしかにその通りだ。たった数分で撃墜されていては、技を披露するチャンスなどなかっただろう。ルナは気を取り直すように深呼吸をすると、大剣を持ち直して表情を引き締めた。

「とにかく、すっかり余計な時間を使ってしまったわ。こうなったら正面突破よ! 急いでタワーに向かいましょう!」

駆け出した2人は、それぞれ地上と空中を最高速度で進んだ。そうしてようやくタワーを目視できる距離まで接近したところで、ルナはタワーの上部にロボらしき影を見つけた。ロボはこちらに背を向けており、ルナたちの接近には気付いていない。

「しめたわ! このまま背後から一気に決めるわよ!」

そう言って強く踏み込んだそのとき、地面が強く発光した。間髪入れずに爆発し、ルナは衝撃をもろに食らって吹っ飛ばされてしまう。

「きゃあ!」

「ルナちゃん!」

クリムが慌てて空中でキャッチするが、ルナの体からは大量の粒子が漏れていた。今の爆発でかなりのダメージを食らってしまったらしい。

「くっ、不覚だわ……。地雷が仕掛けられているのに気付けなかったなんて……」

「ルナちゃん、大丈夫ですか!?」

「心配している場合じゃないわ! ほら来た!」

話している間に、上空からはミサイルが雨あられと降り注いできた。2人は左右に散ってそれらを避けるが、タワーの上部にいる重々しい装甲のロボは、4つの砲門を開いてすぐさま第二波を発射してきた。防衛に残っていたのはバスターだったようで、タワーに陣取りながらひたすら一斉射撃を繰り出している。
ルナは歯噛みした。これほどのダメージを受けていては、あと一発でも食らえばスパークしてしまうに違いない。近接戦に弱いバスターならば近づいてしまえばこっちのものだが、それまではずっと砲撃にさらされ続けることになる。さすがのルナでも、この距離で一発も食らわずに接近できる保証はなかった。
この状態でタワーを確実に破壊するためには、捨て身を覚悟で突進して敵のロボを撃墜するしかないだろう。大剣を強く握り締め、覚悟を決める。

「クリム! 私が突っ込んでチャンスを作るから、タワーの破壊はあなたに任せるわ!」

「突っ込むって……そんな、無茶です! これ以上攻撃を受けたらスパークしちゃいますよ!?」

「だからこそ、私が盾になるって言ってるのよ! 相打ちにできれば上々だけど、それがダメなら鉱石だけでも破壊してみせるわ!」

「そんな……」

クリムはまだ何か言いたげだったが、ルナはそれに構わず言葉を続ける。

「いい? 私が右に飛び出すから、クリムは一旦地上に降りてエネルギーをチャージするのよ! 5秒経ったらアクセルバウンドで一気に距離を詰めるから、クリムは敵の注意が私に向いている間にさっきの攻撃をタワーにお見舞いしなさい! わかった?」

ルナが尋ねるも、クリムからの返事はない。

「クリム? ちょっと、聞いているの!?」

再度尋ねるが、聞こえてきたのは返事とは言えない呟きだった。

「……やっぱり、ダメです!」

クリムは叫ぶように言い捨てると、そのまま一気に高度を上げてタワーへと飛んでいった。作戦とはかけ離れたその行動に、ルナは思わず足を止めてしまう。

「クリム!? 何をしているの、戻りなさい!」

「嫌です! ルナちゃんを危険な目に遭わせるくらいなら、私があの人のお相手をします!」

クリムはどんどん加速していく。敵は急速に接近するクリムへと狙いを定めたようで、4つある砲門をすべてクリムに向けて一斉掃射した。

「えいっ!」

クリムは右に左、さらには上下と縦横無尽に飛び回りながらさらに加速していく。

「全っ然、怖くありません!」

ビームレイピアを構え、今度はひたすら上昇する。

「ルナちゃんに怒られたときの方が、鬼さんみたいでもっと怖かったんですから!」

やがてクリムは限界高度に達したが、そこで不意にブースターの火が消えた。そのまま重力に従って落下していく姿を見たルナは、初戦のバトルを連想して悲痛な表情になる。

「エネルギー切れ!? まさか、ここでうっかりが出るなんて!」

こうなったら自分が行くしかないと、ルナは強く踏み込んで駆け出した。それに気付いたロボが、今度はルナに砲門を向けるが――

「あなたの相手は私です!」

クリムの声が辺りに響く。沈黙していたはずのブースターが再び点火し、ひときわ強い炎を放ちながら急降下を開始した。

「ティアリングダイブ!」

ロボの砲門がクリムを照準する。火薬が爆ぜてミサイルが一斉に発射されるが、クリムは避けることすらしなかった。レイピアを突き出しながら、紅い1本の槍となって直進する。

「クリムゾン、ラァ――――ッシュ!」

次々と砲撃を受けながらも強引に弾幕を突破。ロボは咄嗟に横へ飛んでクリムの突撃をかわすが、それによってがら空きとなった鉱石をクリムのレイピアが貫いた。
タワーを包んでいたバリアが消失し、ロボがクリムの突撃による余波を受けて空中に投げ出されるが、ロボはすぐに砲門を開くとクリムに向かって発砲した。

「きゃああ!」

今度は耐えきれず、クリムは全身をスパークさせながらタワーから落下していく。
タワーはいまだ健在。状況は1対1。
勝負の行方は、ルナに託された。

「ナイスファイトよ、クリム!」

クリムが敵の注意を引きつけてくれたおかげで、ルナは自らの射程距離にロボを捉えることができていた。ここまで近づけば、あとはパンツァーの独壇場だ。

「蒼月流剣技! 月花風刃斬!」

蒼い月の民に伝わる四連続剣技。ルナはブースターを吹かすと、急加速の勢いを乗せながら柄頭を突き出した。

「新月!」

柄を下顎に叩き込み、相手を仰け反らせて体勢を崩す。そうして反撃できない相手に向かって、今度は足元から掬い上げるように大剣を振るう。

「三日月!」

三日月を思わせるほどに鋭い斬撃で、ロボの体を上空に吹っ飛ばす。ルナは強く地を蹴って再度跳躍すると、ぎこちない動きで砲門を向けようとするロボに向かって大剣を振り上げた。

「上弦!」

上段に大きく振り上げた大剣を、ロボの脳天へ叩きつけるように振り下ろす。これが決定打となり、ロボは火花を上げながらスパークして動かなくなった。
着地したルナは、すぐさま方向転換してタワーを見据える。そうして再び走り出し、本来ならばロボに仕掛けるはずだった4撃目をタワーに向かって繰り出すべく跳躍した。

「満月!」

跳躍の勢いで体を回転させる。青白い刀身が空中で大きな円を描く様は、漆黒の夜空に浮かぶ満月を連想させるだろう。その美しさとはかけ離れた破壊力を容赦なくタワーに叩き込めば、タワーは音を立てながら真っ二つに裂け、爆発した。
その瞬間、バトルフィールドにホーンが鳴り響く。

『バトル終了! 熱戦を制したのは、シャインスターズでーす!』

ソプラの明るい声が耳に入ったところで、ルナはようやくバトルが中継されていたことを思い出した。どうやらソプラの実況が聞こえなくなるほどに集中していたようで、ルナは深く息を吐き出すと大剣を背中のホルダーに固定した。
ルナはそのままクリムに歩み寄る。バトルが終わって麻痺状態が解除されたクリムは、勝ったというのになぜか浮かない顔でうつむいていた。

「……ルナちゃん、ごめんなさい……」

クリムはポツポツと呟いた。

「あんなにルナちゃんに鍛えてもらったのに、また撃墜されてしまいました。……今回こそは頑張ってお役に立とうと思ったのに、やっぱり私は、足手まといのままです……」

そう言って落ち込むクリムを見て、ルナは視線を合わせるようにしゃがみ込むと、その肩にポンと手を置いた。
顔を上げたクリムと目が合い、ルナは満足げな笑みを浮かべながら首を振ってみせた。

「何を謝っているの? 今回の功労者は、間違いなくあなたなのよ?」

「……え? でも私、撃墜されちゃいましたよ?」

不思議そうなクリムに、ルナは念を押すように告げる。

「だけど、初めて敵を撃墜できたじゃない。それにタワーだって、あなたが鉱石を破壊してくれたわけだし、あなたが敵の注意を引きつけてくれたからこそ、私はあのバスターを倒すことができたんだからね」

「ルナちゃん……」

ルナの言葉が嬉しかったのか、クリムの瞳が潤みを帯び始める。ここで止めておけば感動的な勝利で終わるのだろうが、ルナはなんだか照れくさくなってしまい、つい悪態をついてしまう。

「それでもまあ、私に言わせればまだまだよね。トラップには引っかかるし、相変わらず射撃は下手だし、人の話は聞かないし。それに……あっ、そうそう! 誰が鬼ですって!?」

「――――あっ! それは……えっと、言葉のあやってやつですよ!」

慌てるクリムの姿を見て、ルナは小さく笑うとそっと右手を差し出す。不思議そうに見つめてくるクリムに向かって、ルナはそっぽを向きながらも明るい口調で告げた。

「でもまあ、ひとまずは認めてあげるわ。この次の働きも、期待していいのよね?」

するとクリムは、わかりやすく表情を輝かせながらルナの手をギュッと握り返した。

「はい! 一生懸命頑張りますね!」

握手を交わした2人は、どちらともなく笑い出した。わだかまりは完全に解け、2人はようやく、本当の意味でチームになれたのだった。

~ つづく ~