コズミックブレイク2
シャイニングスターメモリーズ ≪ 14 ≫

原作:サイバーステップ
小説:青葉あおい

中ではすでにゼロが待っており、2人の姿を認めると空いている席へ座るよう促した。

「運営からの通達だ。おそらく次のバトルに関することだろう」

2人が席についたのを見計らって、ゼロがモニターのリモコンを操作した。
電源が入った液晶パネルに、コスモリーグのロゴマークが映し出される。しばらく待っていると、画面はアイドルスマイル全開で手を振るソプラの姿に切り替わった。

『ルーキーリーグのみなさん、こんばんはー! いよいよ明日、半月に一度のスペシャルマッチが開催されます! 今からルールを説明するので、しっかりと聞いてくださいね!』

ソプラは画面の向こうでウインクすると、背後にあるパネルを示しながら説明を始めた。

『まずは、通常マッチとスペシャルマッチの違いについて説明します。通常マッチは、みなさんがご存じの通り1チーム対1チームで、マッチング相手は抽選によるランダム方式で決定しています。一方スペシャルマッチの場合は、マッチング相手は順位の近いチームになります。対戦方式はその都度変わるので、1チーム対1チームでのバトルのときもあれば、複数チームによるレース形式だったり、はたまたチームの枠を取っ払ったバトルロイヤル方式など様々です』

これだけ聞けば、通常マッチの間に挟まれるイベントのように感じられる。しかし次いでソプラが口にした説明は、シャインスターズにとっては聞き流すことのできない内容だった。

『そしてスペシャルマッチでは、基本的に勝利チームにしかポイントが与えられません! つまり下位チームであっても、スペシャルマッチの成績によっては一気に上位へ食い込むことも可能になるわけです!』

「なんですって!?」

真っ先に反応したのはルナだ。ソプラの説明が本当ならば、これまでの成績不振を挽回できる絶好の機会である。

「それで、ルールは何なの!? 対戦方式は!?」

「ルナ、落ち着きなさい。騒がしくしては、肝心な説明を聞き逃すぞ?」

ゼロに窘められ、我に返ったルナは元通り座り直した。するとタイミング良く、ソプラがパネルの画面を切り替えて新たな説明に入った。

『それでは、明日のバトルを発表します! 今回のスペシャルマッチはこちら、ベースタワー攻略戦です!』

パネルが古めかしいタワーを映し出す。タワーからはアンテナらしき突起が伸び、上部に取り付けられている緑色の鉱石が発光するごとにタワー全体を緑色に輝かせていた。

『このタワーは、コズミックネイブルの開拓作業中に使用されたコスモピース観測装置です。今はオンボロになっているので本来の用途としては使われていませんが、今回のスペシャルマッチでは、このタワーを巡ってバトルを行っていただきます!』

次いで画面が切り替わり、ルールを箇条書きにした説明文が表示される。ソプラはそれらを上から順番に読み上げていった。

『ベースタワーは、それぞれのチームに1つずつ与えられます。勝利条件はただ1つ、相手チームよりも先にこのベースタワーを破壊することです! ただし、タワーにはバリアが張られているので、これが解除されない限りかすり傷1つつけられません。バリアを解除するためには、この鉱石を破壊しなければなりません!』

ソプラが緑色の鉱石を指し示す。それを見たゼロは、顎に手を当てながら思案した。

「ふむ……あの位置では、下からの射撃では角度が悪くて破壊できないな。となれば、飛行して上部から攻撃するか、防衛を突破して直接攻撃を仕掛けるかだが……何にせよ、長距離型のバスターや爆撃が可能なフォートレスがいない我々には、少々骨が折れるバトルになりそうだ」

ゼロが呟くが、問題はそれだけではない。防衛と攻略にメンバーを振り分けるにしても、シャインスターズは3人しかいないのだ。ただでさえ少ない人員をさらに割かなければならないのだから、厳しい戦いを強いられるであろうことは容易に想像できてしまう。

『もちろん相手リーガーへの攻撃も可能ですので、撃墜した場合は通常マッチと同様の撃墜ポイントが加算されます! 自分たちのタワーを防衛しつつ、相手のタワーを攻略しなければならない、チームの結束と戦略が鍵を握るバトルになります! ルーキーリーグのみなさん、はりきって戦ってくださいね!』

ソプラがガッツポーズをしてみせれば、背後では音楽が鳴り始める。どうやら説明はここまでのようで、ソプラは居住まいを正すと締めに入った。

『それでは、明日に備えてごゆっくりお過ごしください! ルール説明は、いつもニコニコ元気に実況! あなたのアイドル! ソプラがお送りしました~!』

フェードアウトで放送が終わり、ゼロは映像が切れるとすぐに立ち上がった。

「色々と問題は山積みだが、真っ先に考慮しなければならないのは編成だ。3人しかいない我々は、攻めも守りもとにかく人員不足だからな」

「タワーが壊されたら負けなんですよね? それなら、みんなでタワーを守っていた方がいいんでしょうか?」

クリムが尋ねるが、ゼロはすぐに首を振ってそれを否定する。

「逆だ。全員で守ったところで、相手の5人が一斉に攻めてきたら数で押し切られてしまう。タワーを破壊しなければ勝てない以上、我々が取るべき方法は、防御よりも攻撃に重点を置いた短期決戦しかない」

「しかし、だからといってタワーの防御を疎かにはできませんよね? となれば、タワー防衛に1人、相手タワーを攻めるのに2人という編成でしょうか?」

ルナの言葉に頷いたゼロは、なぜかジッとルナを見つめてきた。ルナが不思議に思っていると、ゼロは次いでクリムにも視線を向けて、そのまましばらく腕を組んで思案に入った。
しばらくして、ゼロは小さく頷くと口を開いた。

「攻略には私とルナが向かい、クリムはタワーの防衛に回ることにしよう」

経験豊富なゼロと攻撃力の高いルナのペアは、今のシャインスターズにとって最も攻撃力の高い編成だ。普通に考えれば順当な判断に思えるが……

「待ってください」

ルナは立ち上がり、ゼロの編成に異を唱えた。

「攻撃重視にするにしても、タワーを落とされたら負けであることには変わりません。ここは攻守ともに優れている師匠が防衛に回り、私と上空から攻撃できるクリムが攻めに向かうべきです」

そう提案すれば、ゼロは驚いた様子でロボアイを瞬かせる。

「そういうことならば、ルナが防衛に回ればいい。君にはそれだけの実力がある」

「私が防衛に回ったところで、クリムでは師匠のサポートどころか手間をかけるのが関の山です。ましてやタワーの防衛なんて、荷が重すぎて無理でしょう」

「うう……なんか私、思いっきり足手まといになってます……」

クリムが肩を落としてしょんぼりしているのを見たルナは、気にするなと言うように彼女の肩をポンと叩く。

「クリムは素人なんだから、経験豊富な師匠や訓練を積んだ私みたいに動けなくて当たり前よ。それでも、あなたが空中を飛び回ることで相手の注意を分散させられるから、その分攻め込む隙が生まれるはずよ」

ルナはゼロへ向き直ると、真剣な表情で念を押すようにもう一度告げた。

「クリムが攻めに回る以上、ペアを組むのは私の方が適任だと思います」

「しかし……君は、本当にそれでいいのか?」

ゼロは一連の流れにとまどっているようだ。先ほどまで険悪だったのだから無理もないし、編成についてもルナを気遣ってくれているのが十分感じられる。ルナはそれをありがたく思いながら、ゼロを安心させられるように力強く頷いた。

「私はもう大丈夫です。本当に、大丈夫ですから!」

そう言って微笑んでみせれば、ゼロはルナの心情の変化を感じ取ったらしい。今度は迷うことなく首を縦に振ってくれた。

「わかった。明日は私が防衛、ルナとクリムが攻略だ。攻めの判断はルナに一任するから、クリムと協力して頑張ってくれ」

「はい!」

「お任せください!」

ルナは気合いを入れる。今度のバトルは、色々な意味でシャインスターズの今後を占う重要なバトルに思えた。絶対に負けるわけにはいかないと、武器の点検にいつも以上の注意を払いながらもクリムをフォローすることも忘れなかった。

「ちょっと、ビットの閾値がおかしいわよ? 何で『低』にしているのよ?」

「あれ? これって難易度を表しているんですよね? 私は使い慣れていないから、『低』で設定しているんですけど……」

「全っ然違うわよ! ビットは所有者の意志を攻撃に反映させるものなのよ!? あなたはただでさえ攻撃意志が低いのに、そのわずかな意志を反映させるための閾値を最低に設定しちゃったら、ビットが攻撃対象を判別できなくなるじゃない! これじゃあ近くにいる私たちを攻撃して当たり前だわ!」

「ええっ!? そうだったんですか!?」

「そうよ! ……結局、これもうっかりが原因だったってわけね。クリムはいちいち手がかかるんだから……」

そんなやりとりをする彼女たちの姿を、ゼロは離れたところから微笑ましそうに見守っていた。
そうして念入りに準備をしたシャインスターズは、何の因果かまたしても初戦に選ばれてしまった。バトルの舞台は、赤土の広がる荒涼とした惑星レッドロームだ。上空には、バトルの模様を全宇宙に中継するための自律機動小型カメラが飛び交っている。

『さーて! 出場選手のみなさん、準備はよろしいですかー?』

ソプラの声がフィールドに響いたそのとき、タワーの鉱石が輝きを放ってバリアを発生させた。まもなくバトルが始まる。

「こちらの人数が少ないことは相手も知っているはずだ。防衛に多くの人員を割き、攻めてきたところを迎え撃とうとしている可能性が高い。警戒されている中を攻め込むのは困難だとは思うが、すべては君たちの働きにかかっている。頼んだぞ」

「はい!」

「頑張ります!」

最終確認を終えた3人が、各々の武器を構えてスタートの合図を待つ。

『それではいきますよー! タワー攻略戦、バトルスタート!』

ホーンが鳴り響くと同時にルナとクリムが地を駆けた。目指す先はもちろん、相手チームのタワーだ。
先頭を行くルナが、前を見据えたまま背後のクリムに話しかける。

「数の上で不利な場合は奇襲が有効だけど、そのためには敵に気付かれずにギリギリまで近づく必要があるの。ブースターは音がうるさくて使えないから地上を走って行くしかないけど、ついてこられるかしら?」

「大丈夫です! 頑張ります!」

クリムの張り切りは伝わってくるが、それでもクラスの違いによる移動速度の差はどうしたって生じてしまう。ルナはクリムにあわせてスピードを落としながらも、できる限り早くタワーへ辿り着けるように走った。
しばらくして、ルナは上空からの飛行音に気付いて顔を上げた。

「止まって! 隠れるわよ!」

クリムを強引に岩陰に引っ張り込み、身を縮めながら上空を窺う。音は次第に近づいてきて、やがて2体のロボが2人の頭上を通り過ぎていった。武装を見る限りでは、1体はエアリアル、もう1体はフォートレスのようだ。

「あっちは空戦特化の編成で攻めてきたわね。うちはバスターがいないから、高高度の安全圏からタワーを破壊しようって魂胆かしら」

シャインスターズは近・中距離型しかいないため、どうしたって戦略の幅が狭くなってしまう。せめて1人でも長距離型がいればいいのだが、それを今嘆いたところで何の意味もない。ルナたちは、今できるベストを尽くすしかないのだ。
無事にロボたちをやり過ごして岩陰から抜け出たところで、クリムが来た道を振り返りながら心配そうに尋ねてきた。

「ゼロさん、1人で大丈夫でしょうか? 引き返して助けに行った方がいいんじゃ……」

「いいえ、このまま進むべきよ。師匠も言っていたでしょ? 私たちはどうやったって人数的に不利なんだから、相手に攻め込む時間を与えてはいけないの。師匠のためを思うなら、それこそ一秒でも早く奇襲をかけてタワーを破壊するべきだわ」

「そう……ですよね。ゼロさんのためにも、早くしないといけませんよね! こうしちゃいられません!」

クリムが気合いを入れて走り出すが、進む先は岩山に囲まれた一本道だ。ルナは慌ててクリムの後を追いかける。

「待ちなさい! こんな狭い道じゃ、待ち伏せやトラップがあるかも――」

そう言いかけたそのとき、クリムの足元の地面がいきなり盛り上がった。

「きゃっ!」

クリムは突然のことにバランスを崩して転んでしまう。盛り上がった地面から土や砂がこぼれ落ち、隠れていた半透明のネットがどんどん露わになっていく。ネットは四方から収縮を始め、クリムを閉じ込めようとしていた。

「クリム!」

瞬間的にブースターを点火し、アクセルバウンドで飛び込んでクリムに体当たりする。弾き飛ばされたクリムはネットの外をゴロゴロと転がっていくが、ルナは脱出に間に合わず、そのまま閉じ込められてしまった。

~ つづく ~