コズミックブレイク2
シャイニングスターメモリーズ ≪ 4 ≫

原作:サイバーステップ
小説:青葉あおい

「……え? ゼロさん、それってどういうことですか?」

クリムが聞き返すと、ゼロは再び目つきを険しくしながら説明する。

「去年から、ルールが大幅にされたようなのだ。個人参加は廃止になり、最低3人以上で構成されるチーム単位でしか参加登録ができなくなってしまったらしい」

「それって……つまり、2人しかいない私たちは、もう1人仲間を見つけなければリーグには出られないってことですか?」

「そういうことだ。……だが、大抵のリーガーはあらかじめチームを組んでいるだろうから、あぶれている者はいないと思った方がいい。受付も間もなく締め切られるから、故郷へ戻って人員を補充するわけにもいかないな」

「そんなぁ……じゃあ私たちは、どうすればいいんですか?」

「残る手段は、すでに参加登録を済ませたどこかのチームに混ぜてもらうくらいだ」

ゼロの言葉はもっとも現実的な方法だったが、クリムは困ったように首を振った。

「でも、私は故郷の外に知り合いなんていませんよ? ゼロさんは誰か当てがありますか?」

「ない。だが幸いなことに、一度参加登録を済ませてしまえばその後のチーム編成は自由だそうだ。チームが分裂しようが、一度解体して新たに組み直そうが、3人以上でさえいれば規定違反にはならないらしい。苦肉の策だが、バトルでの賞金か何かを対価として手近なところに声をかけて――」

「……あの、それって本当ですか?」

これまで蚊帳の外だったルナが遠慮がちに尋ねてくる。2人が揃って顔を向けると、ルナは再び口を開いた。

「個人参加が廃止されたって、本当ですか?」

「ああ、本当だ。受付に申し込みに行ったのだが、1人では登録できませんと跳ね返されてしまったよ」

それを聞いたルナは、青ざめた顔でその場に座り込んでしまった。どうやらひどくショックを受けたようで、すっかり肩を落としている。

「それじゃあ……私は一体、何のためにここまで来たのよ……」

ルナが沈んだ声で呟く。それを見ていたクリムは何かを察したようで、ハッと息をのんだ。

「……もしかして、ルナちゃんも1人なんですか?」

クリムが尋ねれば、ルナは図星だったようでうなだれるように頷いた。

「新しいルールができていたなんて、ちっとも知らなかったのよ。ここには知り合いなんていないのに、今から2人もメンバーを探すなんて無理よ。どうすればいいのかしら……」

クリムは沈痛な面持ちでルナを見つめていたが、彼女が呟いた言葉を聞くとポカンとした表情になった。

「あれ……? 1人……2人…………ああっ!」

「どうしたクリム?」

ゼロに尋ねられ、クリムはわたわたしながらも2人に提案した。

「そうですよ! 私たちとルナちゃんでチームを組めば、ちょうど3人になりますよ! そうすれば、みんなでコスモリーグに参加できますよね!?」

クリムの提案を聞いた2人は、盲点だったとばかりに揃って顔を見合わせた。

「……たしかに、現状では1番の方法だ。ルナスタシアさん、君はどう思う?」

ルナの瞳にはとまどいの色が浮かんでいたが、彼女も切羽詰まっているのには変わりがない。わずかに考えるそぶりを見せた後、意を決したように立ち上がった。

「とてもありがたい申し出ですが、それを受けるには1つだけ条件があります」

「何だ?」

身構えるゼロに向かって、ルナは深々と頭を下げながら言葉を続けた。

「どうか私を、あなたの弟子にしてください!」

これはゼロにとって予想外だったらしく、ロボアイが激しく明滅している。

「弟子だって? 本気なのか?」

「こんなこと、冗談では言いません。お願いです。私は、願いを叶えるために……コスモピースを集めるためにも、もっと強くならないといけないんです! これも何かの縁だと思って、どうかお聞き届けください!」

真摯な姿からは並々ならぬ決意が伝わってくる。黙り込んでいたゼロは、しばらくすると観念したように頷いた。

「わかった。君にどんな事情があろうとも、チームを組む以上は全力を尽くそう」

その言葉に、ルナの表情が一瞬のうちに輝いた。

「はい! ありがとうございます!」

「そうと決まったら、急いで受付を済ませよう。行くぞ2人とも」

3人はゼロを先頭に駆け出した。

すぐに受付へ辿り着き、エントリー代を支払ってチーム登録をしていると、受付係の事務用ロボが尋ねてきた。

「チーム名の登録はいかがいたしましょうか?」

3人は額を突き合わせながら空白の入力フォームを見つめる。

「悩んでいる暇はないですし、師匠の名前で登録してはどうですか?」

そう提案したのはルナだ。すっかり弟子の気分なようで、さっそくゼロを師匠と呼んでいる。しかしゼロは、ルナの提案に難色を示していた。

「さっきも言った通り、私はあまり目立ちたくはないのだ。それにせっかくつけるのならば、ちゃんとした名前の方が箔もつくだろう。何かいいアイデアはないか?」

具体的な案が出ないまま黙り込む3人を、事務用ロボがパネルの角を指先で叩きながら急かしてきた。

「早くしてください。間もなく受付を締め切りますよ?」

3人が焦ったそのとき、クリムが思いついたようにポンと手を叩いた。

「そうです! キラキラ星なんてどうでしょうか!」

「キラキラ星!? そんな子供っぽい名前は嫌よ!」

ルナがすぐに却下を言い渡しても、クリムは引き下がらなかった。

「絶対いい名前だと思います! コズミックネイブルに入ったとき、コスモピースがキラキラと輝いていてとても綺麗だったんです。それにあやかれば、きっと優勝間違いなしです!」

「だからって、いくらなんでもキラキラ星だなんて……。師匠もそう思いますよね?」

ルナが尋ねるが、ゼロはまんざらでもなかったらしく頷いていた。

「よし、その案を使おう」

「やったー! さすがはゼロさんです!」

「し、師匠!? 本当にいいんですか!? キラキラ星ですよ!?」

ルナが慌てて止めに入ろうとしたが、ゼロはそれを制すると受付にチーム名を告げた。

「我々はシャインスターズだ。それで登録してくれ」

「かしこまりました。少々お待ちください」

ロボが入力するのを横目に、ルナとクリムが不思議そうにゼロへ尋ねた。

「師匠、どういうことですか?」

「キラキラ星じゃないんですか?」

「さすがにキラキラ星のままでは子供っぽさが強いが、素材としては悪くなかった。シャインスターズは、簡単に言えば『輝く星々』の意味になる。これならば、2人とも文句はないだろう?」

ゼロの言葉に納得のいった2人は、揃って「はい!」と元気の良い返事をした。
その後の登録は滞りなく行われ、パネルの操作を終えたロボが顔を上げた。

「チーム登録が完了しました。この後すぐに運営からのルール説明となりますので、このまま広場で待機していてください」

待機と言われ、3人はひとまず落ち着ける場所を探して受付を離れた。
ここまで来れば、周囲にはちらほらとリーガーの姿が見受けられるようになる。クリムはキョロキョロと辺りを見渡していたが、そのうちにふと生じた疑問を口にした。

「どこを見てもロボさんばっかりですけど、私やルナちゃんみたいなヒュムは参加していないんでしょうか?」

広場にはリーガーが続々と集まりだしているのに、ザッと見た限りではヒュムの姿が見当たらなかった。クリムに尋ねられ、前を歩いていたゼロは首だけを背後に巡らせてそれに答えた。

「コズミックネイブルは、元々は先住民がいない未開拓の宙域だ。発見されたのはおよそ50年前で、積極的な調査によってどんどん開拓が進んでいったのだが、ヒュムはロボよりも環境適応能力が低いから移住に遅れを取ってしまったのだ」

「それじゃあ、この辺の星々はすべてロボの居住地なのですか?」

ルナも疑問を挟んできたが、ゼロはそれに対しても丁寧に答えた。

「すべてではない。しかしヒュムが移住を開始した頃には、惑星のほとんどがロボの居住地として使われていたから住める星は限定されてしまった。そういった事情もあって、この辺りではヒュムを見かける方が珍しいのだよ」

「なるほど……それじゃあヒュムのリーガーは、わざわざ外部の宙域からここに来ている猛者ばかりってことですね。ますますバトルが楽しみになってきました」

ルナが指を鳴らさんばかりに拳を強く握り締める。その瞳は、この先の戦いを見据えているかのように輝いていた。
そのとき、何の前触れもなく広場が暗転する。

「きゃっ! 停電です!」

驚いたクリムがルナの腕に縋り付く。上空は宇宙空間のため、明かりといえば星々の瞬く光だけだ。周囲は隣にいる者の顔すら判別できないほど真っ暗で、困惑したリーガーたちのざわめきが広がっていく。

『みなさーん! こんにちはー!』

突然明るい声が響き渡り、人々のざわめきを打ち消した。続いてファンファーレが鳴り響き、スポットライトが点灯する。

『ようこそコスモリーグへ! 私は実況兼司会進行役のソプラと申します! どうぞよろしくお願いしまーす!』

ゼロの名が刻まれている石碑の向こう、スポットライトに照らされた巨大なステージの上には笑顔で手を振る少女の姿がある。その姿を見たリーガーの間から、次々と歓声が沸き起こった。

~ つづく ~